■特徴・分布・生育環境
      丈30cmほどの茎の先に径30cmほどの大きな円形の葉をつける多年草です。
      雌雄異株です。
      
      春に目だない花をつけます。
      雌花は白っぽく、雄花は黄色っぽいこと以外は見分けるのは難しいものがあります。
      ただ、雌花は春の終わりには高さ30cm〜50cmほどにもなります。
      雄花は大きくなる前に消えます。
      
      花の新芽は、昔から「フキノトウ(蕗の薹)」として食用にされ、親しまれてきています。
      
    日本原産とも言われますが、朝鮮半島や中国大陸東北部にも自生があるようです。
      多摩丘陵では、林縁や畑地のわきにしばしば群生しています。
      
      ■名前の由来
      葉が大きく風で揺れやすいことから「葉吹き」などが転訛したなど諸説ありますが、定説はありません。なお「古い名」として「ふふき」があるようです。
      
      ■文化的背景・利用
      蕗の薹(ふきのとう)や蕗の芽・蕗の花は、俳句の春の季語です。
      また、蕗の葉・伽羅蕗(きゃらぶき)などは同様に夏の季語です。
      
      万葉集の
      「明日よりは 春菜(わかな)採まむと 標めし野に 昨日も今日も 雪は降りつつ」
      の山部赤人の歌にある「わかな(若菜)」は、セリやノビルなどとともにフキノトウも意味していると言われています。
      
      平安時代の「本草和名」などにその名が現れています。
      江戸時代の「本草綱目啓蒙」や貝原益軒による「大和本草」などにもその名が現れています。
      蕪村や一茶の句集にも詠われています。 
      
      ■食・毒・薬
      フキの花の蕾は、昔から「蕗の薹(ふきのとう)」と呼び山菜としてテンプラや味噌であえて焼くなどして、独特の風味を賞味します。
      
      葉柄はスジをとって、重層や灰汁でアク抜きし煮物や炒め物として広く食用にされます。
      
      また、塩漬けにして保存食にもします。苦みの少ない品種が栽培されていて、野菜として流通しています。
      葉は茹でて水に晒してアクを抜き、細かく刻んで佃煮にします。
      食用にする茎や葉にはアルカロイド系の有毒成分を含んでいますが、アク抜きすれば大丈夫です。
      薬用にはしないようです。
      
      ■似たものとの区別・見分け方
      仲間(同属)のニオイカントウ(匂款冬:款冬はフキのこと)が稀に植栽されていますが、昭和初期に観賞用に渡来した外来種で、草姿や葉がフキに似ていますが、かなり小型で早春の花は淡紫色なので容易に区別できます。
      また、草姿が似たものにツワブキがありますが、ツワブキの葉の表面には明瞭な艶(つや)があり、花も黄色で明瞭な花弁(舌状花)があります。ただ、ツワブキはフキとは別属のツワブキ属です。
      ツワブキもよく詩歌に現れますが、古い時代のものはなく「庭に干す土人形や石蕗(つわぶき)の花」(正岡子規)など近世のものです。
      なお、有名な佃煮「キャラブキ」はツワブキの若い茎をよく煮込んで作ります。
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     写真は「早春の花」、「フキノトウ」、 「春の雌花」と「葉」の4枚を掲載 |  
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     | フキの早春の花(雄花?) |  
      
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     | フキノトウ |  
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     | フキの春の雌花 |  
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     | フキの葉 |  
     
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