■特徴・分布・生育環境
      落葉性のツル性の木本とする場合と草本とする場合があります。
      
      初夏に、長さ3cmほどの暗紅紫色の鐘形の花を長い花柄に吊り下げます。
      花に金属のような光沢があり美しいので観察会などでは人気があります。
      花弁に見えるのは萼(ガク)片で花弁はありません(キンポウゲ科の特徴でもあります)。
      
      葉は 葉柄が長く、三出複葉(三枚の長さ3〜5cmの小葉からなる葉)で、葉縁に粗い鋸歯(葉の縁のギザギザ)があります。
      茎(ツル)は暗紫色を帯びています。
      
    学名(属名)からわかるようによく園芸用に植栽されているクレマティスの仲間です。ただ、花の形態は似ているとは言えません。
      
      本州以西に分布しますが、海外での分布は確認できていません。
      学名の「Clematis japonica」の「ジャポニカ」からすると日本で確認記載された種であるとわかりますが、日本固有種であるかどうかは確認できていません。
      多摩丘陵では、明るい林縁に稀に見られるだけで、個体数が少なく自生地も限られていて地域絶滅が危惧されます。
      
      ■名前の由来
      花の形が小さい釣鐘(つりがね)すなわち半鐘(はんしょう)の形に似ていて、ツル性であるという命名です。
      
      ■文化的背景・利用
      半鐘(はんしょう)は、「火の見櫓(やぐら)」の塔上に吊り下げられていた小型の釣鐘です。
      火の見櫓は、高い建物が多くはなかった1950年ごろまでは、火事を見張るために町々に立てられていた櫓で、櫓の上に鐘がぶら下げられていて火事の際にはこの鐘を打ち鳴らして人々に火災の発生を伝えました。
      
      花の形態がこの半鐘に似ているとの命名ですが、現代では火の見櫓はおろか半鐘そのものすら見たことがない世代が多くなってきて、名前の由来に親しみはないかもしれません。
      なお、万葉集を始め、その後の多くの歌集や文芸、あるいは近世の詩歌などには、よく知られたものはないようです。
      
      ■食・毒・薬
      明確に有毒であるという報告はないようです。
      しかし、仲間(同属)のセンニンソウやボタンヅルなどは有毒であり、また、キンポウゲ科ではほとんどの種が有毒なので、このハンショウヅルも有毒であると考えたほうがよいと推定されます。
      薬用にするという報告もないようです。
      いずれにしてもこのような場合、食用にするのは避けるべきです。
      
      ■似たものとの区別・見分け方
      似たものに、花色が黄白色のトリガタハンショウヅル(高知県の鳥形山で最初に確認されたためにトリガタです)、亜高山帯に生育するミヤマハンショウヅルがありますが、多摩丘陵に似たものはありません。
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     写真は「花」、「花と葉」と「葉」 の3枚を掲載 |  
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     | ハンショウヅルの花 |  
      
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     | ハンショウヅルの花と葉 |  
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     | ハンショウヅルの葉 |  
     
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