■特徴・分布・生育環境
      草丈20〜40cmほどの多年草です。
      疎林の林床〜林縁を好みます。
      
      細い針金のような茎を叢生させて、春に、茎頂に紫赤色〜淡紫色の花をいくつか(総状花序)つけます。
      花径は2cmほどです。花弁は4枚です。ガク片も花弁状になり、花全体としてはどことなく船の錨に似ています。
      
      葉は、2回三出複葉(花柄が三つに分かれその先に三つの小葉をつける葉)ですが、葉軸が長いのでばらついて見えます。
      小葉は2〜3cmほどの卵型で葉の縁に毛が目立ちます。
      
    東北地方以南の太平洋側から朝鮮半島・中国大陸に分布します。
      多摩丘陵では、この30年ほどの間に急激に個体数を減らしていてます。盗掘が主因です。
      2010年現在ではごくごく限られた地域に少ない個体数しか確認されておらず、2015年現在ではそれらの自生地からもほとんど姿を消しています。地域絶滅が危惧されます。
      
      ■名前の由来
      花の後部に管状の距(きょ/尾状に伸びた部分)があって、花の形が舟の錨に似ているとの命名です。
      
      ■文化的背景・利用
      万葉集に時代から親しまれていたらしく「三枝(さきくさ)」と呼ばれ
      「春されば まづ三枝の 幸くあらば 後にも逢はむ な恋ひそ我妹」
      と詠われています。
      江戸時代の小野蘭山による「本草綱目啓蒙」などの本草書にもその名が現れています。中国では強壮薬として利用されていたことが伝えられています。
      
      ■食・毒・薬
      漢方では茎や葉を乾燥させたものを生薬「和淫羊霍(わいんようかく)」(中国原産のホザキイカリソウの生薬「淫羊霍」に対応した名前)と呼び煎じて強壮・強精に使用します。
      しばしばホワイトリカーに漬けてイカリソウ酒にして強壮用に飲用されます。
      茎や葉には、精液の分泌を促進する効果があることが動物実験で確認されているという報告があります。
      
      ■似たものとの区別・見分け方
      多摩丘陵には似たものはありません。
      日本海側には仲間(同属)で常緑のトキワイカリソウが分布します。
      他に黄色い花をつけるキバナイカリソウなどがありますが、いずれも多摩丘陵には分布していません。
      
      なお、ホザキイカリソウは中国原産で江戸時代に薬用に渡来したものですが、花が小さく円錐塔状の花序になるので容易に区別できます。野生化してはいないようです。
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     写真は「花」(1)、「花」(2)、 「花と新葉」と「葉」の4枚を掲載 |  
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     | イカリソウの花(1) |  
      
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     | イカリソウの花(2) |  
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     | イカリソウの花と新葉 |  
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     | イカリソウの葉 |  
     
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