■特徴・分布・生育環境
      この仲間であるガマ科はガマ属のみからなり、ガマ属は10種ほどからなる小さな科です。
      ガマ科は日本では、ガマ、コガマとヒメガマの3種が自生します。多年草です。
      いずれも、とても細長い剣状の葉の間から、長さ20cm前後の細長い円筒状〜ソーセージ型で淡褐色〜褐色の花(果)穂を直立させるのが特徴です。
      
      コガマは湿生地〜水湿性地に自生します。
      
      茎の下部から、幅1.5cmほど、長さ1〜1.5mほどの数枚の剣状の細長い葉を叢生させ、草丈1〜2mほどになります。
      葉はほぼ垂直に立ちますが、葉の中ほどでやや横向き〜下向きになる葉もあります。
      
      夏から秋(多摩丘陵では6月下旬〜8月)に人の背丈ほどになる花茎を立て、その先に淡褐色(当初は淡緑色)の細い円筒型の花(果)穂をつけます。肉穂花序(にくすいかじょ)と言います。
      花茎の高さは葉の高さとほぼ同じです。
      花序は淡褐色なので目立ちそうな気がしますが、花序は当初は径2cm前後の細長い円筒形で葉の幅と同じくらいでなので、多くの葉に紛れていて見落としがちになります。
      
      花穂は、上下2段に分かれ、上部が雄花序で下部が雌花序です。花序には微小な雌花と雄花を多くつけます。
      ヒメガマのような雌花序と雄花序の間の長さ3cm前後(〜時に6cm前後)の空隙はありません。
      
      雄花序は、淡褐色で夏の終わり頃には萎れて目立たなくなり枯れ落ちます。
      雌花序は初秋には径2cm前後、長さ10cm前後になり、淡褐色から濃褐色の果穂になります。
      雌花序は当初は淡緑色で、雄花序が熟す頃に淡褐色になります。
      
    秋深くに果穂は濃褐色に熟し、やがて汚白色から淡褐色の綿のような毛をつけ毛玉のようになります。
      
      日本各地から世界に広く分布しています。
      多摩丘陵では溜池の縁などに自生しますが、西暦2010年現在では自生地は限られていて個体数も少ない。ただ、もともと自生個体は少なかったようです。
      これは、1960年代から急速に進んだ開発によって溜め池や小河川の護岸化が行なわれたことにより、自生可能な環境が大きく減少したことによると考えられます。
       
      ■名前の由来
      ガマの名の由来はよくわかっていないようです。
      「小(こ)」は、ガマよりも葉が細く花穂がやや小型なことからです。
      ガマは、アルタイ語で「葦(あし)」を意味する「カマ」から転訛したという説がありますが一般的ではありません。
      
      ■文化的背景・利用
      「ガマ」は古い時代からよく知られた存在です。
      なお、江戸時代頃までは「コガマ」や「ヒメガマ」は明確に区別されていなかった可能性があります。
      
      「古事記」に、大国主命(おおくにぬしのみこと)が、サメに毛をむしられた白兎(しろうさぎ)の赤い肌を治すのに、ガマの穂の花粉「蒲黄(ほおう)」を敷き散らしてその上に寝転べば癒えると教えたという「因幡の白兎」伝説は有名です。
      
      また、果実の綿毛は、昔はフトンに詰めて使われ「蒲団(ふとん)」の語源になっています。
      
      さらに、昔はウナギをブツ切りにして円筒状のまま焼いたことから、その形がガマの穂に似ているので「蒲焼」の語源にもなっています。
      同じように、昔は円筒状であった「蒲鉾」の語源にもなっています。
      
      万葉集などの和歌集には現れていないようです。
      日本最古の平安時代の本草書「本草和名」、同時代の「倭名類聚抄」に「蒲」が現れています。
      江戸時代の各種の本草書にその名が現れています。
      
      ■食・毒・薬
      漢方では、全草を「香蒲」と呼び利尿に効能があるとされます。
      
      上述の因幡の白兎伝説の通り、ガマの花粉を乾燥させたものを「蒲黄(ほおう)」と呼び、切り傷や火傷の治療に用います。
      
      ガマの若い芽を茹でてアク抜きして、そのまま野菜のようにして食用にするという報告があります。
      
      ■似たものとの区別・見分け方
      日本には、「ガマ」の他に「コガマ」と「ヒメガマ」が自生しますが、互いに似ていて見分け難いところがあります。
      
      〇ガマでは、葉は幅が2〜3cmほどあり、見た目でも葉が幅広に見えます。個体変異があるので確実ではありませんが、普通は(雌)果穂が太く(径2〜3cmほど)長く(20cmほど)見えます。
      
      〇コガマでは、葉の幅が1.5cm前後で見た目でも細く見えます。ただ、ヒメガマの葉も同じように細いので葉の幅でコガマとヒメガマを区別することは難しい。個体変異があるので確実ではありませんが、普通はヒメガマよりも(雌)果穂がやや太い。ガマよりも果穂の長さがやや短い(長さ10cm前後)ことでガマとは区別できます。
      
      〇ヒメガマでは葉の幅が1.5cm前後で見た目でも細く見えます。ただ、コガマの葉も同じように細く見えるので、ガマとは区別できますがコガマとを区別することは難しい。
      ヒメガマでは、花(果)穂が径1.5cmほどの細長い円筒形で、ガマやコガマよりも細い。ヒメガマと、ガマやコガマとの最も良い区別点は、雌花序と雄花序の間に長さ3cm(〜6cm)ほどの空隙があって緑色の軸が見えることにあります。
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     写真は、「花穂(上部は雄花序、下部は雌花序)」 と「全体」の2枚を掲載 |  
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     | 花穂(上部は雄花序、下部は雌花序) |  
      
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     | コガマの全体 |  
     
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