■特徴・分布・生育環境
       
      落葉の高木で高さ10mほど、直径30cm、時に高さ15m、直径60cmにも達します。
      多摩丘陵のような里山の主要構成樹種です。
    樹皮は灰褐色でコルク質が発達していて、縦に不規則な深い裂け目があります。
      
      葉は互生(互い違いにつく)し、長さ15cm、幅6cmほどにもなり、長楕円形で葉先は鋭三角形状です。
      葉の縁には波状の鋸歯(葉の縁のギザギザ)があり、鋸歯の先端が長さ3mmほどの針状になるのが特徴です。
      
      雌雄同株ですが、雄花と雌花があり、春に長さ10cmほどのヒモ状の雄花を多くつけ、枝先に小さな雌花を数個つけます。
      
      果実は、いわゆるドングリで翌年の秋に熟し、長さ2cmほどのほぼ球形です。
      
      岩手・山形県以南の本州以西から北東アジアに分布します。
      多摩丘陵では、最も普通に見られる樹種のひとつです。
      
      ■名前の由来
      クヌギは古い時代から役にたつ木として重用されていたようで、食の木(クノキ)、薪の木(クノキ)あるいは国の木(クニノキ)が転訛して「クヌギ」になったと言われています。
      
      ■文化的背景・利用
      万葉集に「橡」などの名で6首程に詠われています。
      「日本書紀」や「古事記」にもその名があらわれているようです。
      多くの本草書に、その名が現れています。
      
      材は器具材などに利用されます。果実や樹皮は染料に利用されます。
      クヌギはコナラと同様に、材は薪炭材、シイタケ栽培のホダ木、落ち葉は堆肥や腐葉土など、古い時代から広く利用されてきていました。
      
      クヌギは、後述するコナラとともに里山を代表する樹種です。
      切り株からの萌芽力が強く、伐採しても30年後程度で再生することから、循環型に重用されてきました。
      
      このように約30年程度で伐採し、切り株から萌芽させることを「萌芽更新」と呼びます。
      切り株から株立ち状に生長したいくつかの幹のうち、主要なものだけを残して他を除伐することを「もや分け」と言います。
      
      ■食・毒・薬
      クヌギのドングリは渋が強いのでそのままでは食べられません。
      皮をむいて細かく砕き、何回も水に晒して白いデンプンを沈殿させ、ドングリ粉として食用にできます。
      そのため古い時代には、飢饉などの際に備えて備蓄されたようです。
      薬用には利用しないようです。
      
      ■似たものとの区別・見分け方
      〇仲間(同属)のコナラは、葉の形が倒卵型(葉先の方で幅が広くなる)で葉先は鋭三角形状になり、葉の縁には尖った粗い鋸歯(葉の縁のギザギザ)があることで容易に区別できます。
      
      〇クヌギに似たアベマキは、樹皮にクヌギよりもさらにコルク質が発達していて葉裏に灰白色の毛が密生していることで、クヌギと区別できます。
      分布が主として中部地方以西なので多摩丘陵には自生はないようです。西日本の里山を代表する樹種です。
      
      〇仲間(同属)のミズナラは、温帯では標高1000mほどの冷涼な気候の場所に生育し、多摩丘陵には分布していません。
      ミズナラの葉は、コナラの葉に似ていますが、鋸歯がコナラよりもさらに粗く大きいことで区別できます。
      
      〇里山に普通に見られる同属のシラカシやアラカシなどのカシの仲間とは、カシの仲間は常緑であり、さらに葉の形がまるで違うので区別は容易です。
      
      なお、クヌギの葉とクリの葉はよく似ていますが(幹はまるで違う)、クヌギの葉の鋸歯の先端は褐色で糸状ですが、クリの葉の鋸歯の先は針状で先っぽまで緑色(葉緑素がある)です。
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     写真は「果実」、「幼果実」、 「クヌギ(左)とコナラ(右)のドングリ」、 「果実と葉」、「葉」と「幹」 の6枚を掲載 |  
      
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     | クヌギの果実 |  
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     | クヌギの幼果実 |  
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     | クヌギ(左)とコナラ(右)のドングリ |  
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     | クヌギの果実と葉 |  
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     | クヌギの葉 |  
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     | クヌギの幹 |  
     
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