■特徴・分布・生育環境
      北米原産の外来種で、約100年ほど前に、神奈川県の箱根の強羅自然公園に植栽されていたものが逸出したものとされています。
      
    後述する「秋の七草」のひとつ「フジバカマ」の仲間(同属)です。
      「マルバ」の名はありますが、葉が丸いわけではなく、フジバカマに似ていて、フジバカマでは葉が基部まで3深裂しているのに対して、普通の単葉なので「マルバ」とされたようです。
      
      草丈1mほどになる多年草で、葉は長さ7〜15cm、幅4〜9cmほどの卵型で葉先は鋭三角形です。葉には粗い鋸歯(葉の縁のギザギザ)があります。
      
      花は、小さな筒状花が15〜25個ほどで頭花を構成し多くの頭花を浅い皿型(散房状)に密につけます。
      秋に咲き白色で開花すると花糸(おしべ)がほつれたような形態になります。
      
      多摩丘陵では、稀に見られます。
      
      ■名前の由来
      「フジバカマ」の名は、花色が藤色で個別の花の形が袴に似ていることからこの名前になったというのが一般的です。
      ただ、万葉集で既に「ふじばかま」とよばれていることから、名の由来は違っていた可能性もあります。
      
      上述のように、「マルバ」の名はありますが葉が丸いわけではなく、フジバカマに似ていて、フジバカマでは葉が基部まで3深裂しているのに対して、普通の単葉なので「マルバ」とされたようです。紛らわしい命名です。
      
      ■文化的背景・利用
      マルバフジバカマは渡来して歴史が浅いこともあり、知られた詩歌や文芸、あるいは本草書などにはその名は現れていません。
      
      なお、「フジバカマ」は「秋の七草」のひとつです。万葉集の山上憶良の歌
      「秋の野に、咲きたる花を、指(おゆび)折り、かき数ふれば、七種の花」
      「萩の花、尾花(すすき)、葛花(くず)、なでしこの花、おみなえし、また藤袴(ふじばかま)、朝貌(あさがお:ききょう)の花」
      が、「秋の七草」の起源となっています。フジバカマが万葉の時代から親しまれていたことをうかがわせます。
      
      古今集や西行法師による「山家集」などに、フジバカマが詠われています。
      源氏物語の30帳は「藤袴」となっています。
      
      ■食・毒・薬
      仲間(同属)のフジバカマやヒヨドリバナにはアルカロイド系の有毒成分が含まれるので、このマルバフジバカマにも同様な有毒成分が含まれると考えられます。
      したがって、食用にするのは危険です。
      なお、フジバカマは、漢方では、利尿、通経や黄疸などに効能があるとしています。花蜜にもアルカロイド系の有毒成分を含むとのことです。
      
      ■似たものとの区別・見分け方
      〇仲間(同属)のフジバカマでは、葉が基部まで3深裂しているので容易に区別できます。
      
      〇同じく仲間(同属)のヒヨドリバナ、サワヒヨドリやヨツバヒヨドリの花がやや似ています。
      これらでは頭花の筒状花は5個程度でややまばらに咲いているように見えますが、マルバフジバカマの頭花の筒状花の数は15〜25個と多く、密につけるので区別できます。
      
      〇全く別種ですが、花序の印象がやや似ているオトコエシでは花冠が明らかに5裂していること、葉が羽状に深裂していて葉先の裂片が大きいことで容易に区別できます。
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     写真は「花」、「花と葉」、「花の総苞」と「葉」 の4枚を掲載 |  
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     | マルバフジバカマの花 |  
      
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     | マルバフジバカマの花と葉 |  
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     | マルバフジバカマの花の総苞 |  
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     | マルバフジバカマの葉 |  
     
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