■特徴・分布・生育環境
      浅い沼地や泥湿地に自生する多年草です。
      地下に太い根茎を這わせ、群落を作ります。高原などの沼沢地では、しばしば密に群生します。
      
      高地や北地の沼沢地にはよく見られます。ただ、温帯の平地の沼沢地にも点々と自生があり、そのことから氷河期の残存植物であるとするのが一般的です。
      
      草丈20〜40cmほどです。基部から葉柄と花茎を立て、水面よりも上に葉と花穂を出します。
      
      春早く(多摩丘陵では3月末〜4月初)に花穂を立てて、狭円錐塔状(総状花序)に多くの花をつけます。花は花序の下部から咲き上がるので、花期は比較的長い。
      
      花は白色で、漏斗型ですが、花冠(ガク)が深く5裂しているので5弁花に見えます。
      花径は1.5cm前後で、5裂している裂片はほぼ平開します。裂片は細く上面に密に長い毛があり目立ちます。
      
      葉は、3小葉からなる三出複葉で、やや厚みがあります。葉柄は長く20cmほどもあります。
      小葉は、長さ5〜8cmほど、幅3〜5cmほどの広楕円形で葉先は鈍三角形状です。葉縁には細かい鋸歯(ギザギザ)があるのが普通です。
      
      日本各地から北半球に広く分布します。
      多摩丘陵では、ごく稀で、ごく一部で保護植栽されているものを見るだけです。
         
      ■名前の由来
      葉が柏の葉に似ていて三小葉だからという説明が多いのですが、似ているとは言えません。
      それよりも家紋としての「三つ柏」(柏の葉3枚を組み合わせた造形)には似ています。
      「ミツガシワ」の名前が成立したのが後述のように江戸時代後期であることを考え合わせると、そこから「ミツガシワ」となったと考えるほうが説得力がありそうです。
      
      ■文化的背景・利用
      万葉集を始め知られた詩歌にはミツガシワは現れていないようです。
      
      ただ、同じミツガシワ科の「アサザ」は、万葉集の長歌に「あざさ結ひ垂れ」として歌われています。この「あざさ」は「アサザ」であるとされています。
      なお、アサザは多摩丘陵では、3ヶ所ほどでアサザ池が知られています。ただ、これらは保護植栽されたものであると思われます。いずれにしても環境省による準絶滅危惧種のひとつです。
      
      江戸時代の本草書である小野蘭山による「本草綱目啓蒙」(1806年)に「睡菜」(ミツガシワの薬名)として「ミツガシハ」の名が現れています。
      しかし、他にも「ミヅハンゲ」や「ヌマゴボウ」など多くの名が合わせて上げられているので「ミツガシワ」の名が定着したのはそれ以降であるようです。
      
      ■食・毒・薬
      古い時代から「睡菜」(すいさい)と呼ばれ、健胃薬や解熱薬として利用されてきているようです。
      食用にはしない、というかできないようです。
      
      ■似たものとの区別・見分け方
      多摩丘陵では、似たものはありません。
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     写真は「花と花穂(咲き始め)」、 「花と花穂(ほぼ咲き終り)」 「花と葉(沈水の個体)」と「葉」の4枚を掲載 |  
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     | ミツガシワの花と花穂(咲き始め) |  
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     | 花と花穂(ほぼ咲き終り) |  
      
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     | 花と葉(沈水の個体) |  
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     | ミツガシワの葉 |  
     
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