■特徴・分布・生育環境
      キク科の植物は花の形態が似ているものが多く、見分けるのが大変ですが、多くが花期が春か初秋〜秋です。
      したがって、花期が夏であるこの「オグルマ属」のオグルマとカセンソウは見分けやすい仲間です。さらに、黄色の花被片が線形でその数が多いことでも、他のキク科の植物とは区別し易い。
      
      ただ、オグルマとカセンソウは、互いにそっくりで見た目での区別はほぼ不可能です。区別の仕方は後述の通りです。
      なお、この2種は多摩丘陵では自生は極めて稀です。
      
      このオグルマは、湿性の高い場所〜湿性がややある場所に自生する多年草です。
    花時には、草丈30cm〜60cmほどになります。
      
      普通は夏に、茎頂で花柄を分けて径3〜4cmほどのやや大型の黄橙色のキク型の花をいくつかつけます。
      花の周囲の花被片(舌状花)は細い線形で数多くつきます。
      花の基(底)部を形成している総苞(緑色の小さな裂片が密に並んでいる部位)の総苞片は、巾1mmほどと細く、長さがほぼ揃っています。
      この総苞片は、とてもよく似た仲間(同属)のオグルマとの区別点のひとつですが、見慣れていないと難しいところがあります。
      
      葉には大小があり、長さ5〜10cmほど、幅1.5〜3cmほどの狭長楕円形で葉先は鋭三角形状です。葉柄は無くやや茎を抱きます。
      葉の裏の葉脈は隆起していますが、目立たないこともある。
      
      痩果(そうか)は長さ1mmほどの円柱形で有毛です。
      この痩果(そうか)は、とてもよく似た仲間(同属)のオグルマとの区別点のひとつですが、微細な部位なので区別は難しい。オグルマでは有毛ですがカセンソウでは無毛です。
      
      日本各地〜東北アジアに分布します。
      多摩丘陵では、1970年代には既に自生は稀であったようです。2015年現在では自生は確認できていません。現在では一部で保護植栽されているだけです。
        
      ■名前の由来
      「旋復花」は、中国での漢字名です。平安時代の本草書「本草和名」に「旋復花」の名が現れていますが、その読みは「オグルマ」ではなかったようです。
      江戸時代の「本草綱目啓蒙」には「旋復花」として「ヲグルマ」や「ノグルマ」が現れているとされていて、江戸時代には「オグルマ」の名があったようです。
      「オグルマ」は「小車」で、花を小さな車に擬えたものであるとするのが一般的です。
      
      ■文化的背景・利用
      上述の通り、平安時代の本草書「本草和名」に、中国での漢字名である「旋復花」の名が現れていますが、その読みは「オグルマ」ではなかったようです。
      江戸時代の「本草綱目啓蒙」には「旋復花」として「ヲグルマ」や「ノグルマ」が現れているとされていて、江戸時代には「オグルマ」の名があったようです。
      万葉集を始めとして多くの和歌などには詠われていないようです。
      
      ■食・毒・薬
      漢方では、乾燥させた花を旋覆花(せんぷくか)と呼び、生薬として健胃や利尿に効能があるとするようですが未確認です。
      有毒であるという報告はないようですが、生薬とされるとのことなので、食用にはできません。
      
      ■似たものとの区別・見分け方
      キク科の中で、この「オグルマ属」のオグルマとカセンソウは、他のキク科の植物とは見分けやすい仲間です。
      すなわち、
      ・花期が夏であること(多摩丘陵では6月中旬〜7月)
      ・黄色の花被片が線形でその数が多いこと
      で、他のキク科の植物とは区別し易い。
      しかし上述の通り、オグルマとカセンソウは互いにそっくりで見た目での区別はほぼ不可能です。
      
      ○植物学的には、
      ・オグルマの「痩果(そうか)」には毛がある
      ・カセンソウの「痩果(そうか)」には毛がない、
      ことで同定します。
      ただ、痩果(そうか)は長さ1mmほどの円柱状で微細な部位なので、この区別点は通常では確認がほぼ無理です。
      
      しばしば、カセンソウでは葉の裏の葉脈が隆起している、のに対して、オグルマでは葉の裏の葉脈は隆起していない、とされます。
      しかし、オグルマでも葉の裏の葉脈は隆起しています。ただし、オグルマでは目立たないことがある、といった程度の違いです。
      
      慣れないと難しいのですが、この両者は総苞(花の基部を形成している緑色の小さな葉状片が密に重なりあっている部分)には少し違いがあります。
      カセンソウの総苞片は巾2〜5mmほどで明らかに葉状に見える、のに対して、オグルマの総苞片は巾1mmほどで細く線形に見えます。
      また、カセンソウでは総苞片の長さが見た目では不揃いである、のに対して、オグルマでは総苞片の長さは見た目では揃っています。
      
      ○仲間のミズギク(水菊)はオグルマやカセンソウに似ていますが、茎葉が小さく(オグルマやカセンソウの半分ほど)、花期に長さ5〜10cmほどのサジ型の根生葉が残っています。
      また、オグルマやカセンソウでは茎頂で花柄を分けていくつかの花をつけますが、ミズギクでは茎頂にはひとつの花をつけます。
      なお、ミズギクは近畿地方以西に分布し、多摩丘陵には自生はありません。
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     写真は「花」、「葉」、 「葉の裏(葉脈が隆起が目立つもの)」、 「葉の裏(葉脈の隆起が目立たないもの)」 の4枚を掲載 |  
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     | オグルマの花 |  
      
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     | オグルマの葉 |  
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     | 葉の裏(葉脈が隆起が目立つもの) |  
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     | 葉の裏(葉脈の隆起が目立たないもの) |  
     
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