■特徴・分布・生育環境
      明治時代初期に欧州から渡来したとされる外来種です。
      
      長楕円形で多くの切れこみのある根生葉の中心から茎を立てて茎頂に一つの花をつけます。
      花色は黄色で、多くの舌状花(花弁に見えます)だけからなります。
      花の基部を構成している緑色の総苞の多くの総苞片は外側に向かって強く反り返っています。
      
    花茎は高さ10〜20cmほどで、果実(綿毛をつけた種子を球形につける)の時期にはさらに伸びて高さ20〜30cmほどになります。
      花茎は中空(中心に穴が空いている)です。
      
      花は春から秋まで長い間咲いているので、春にだけ花をつける在来のタンポポよりも優勢であるように思われることが多いようです。
      また、セイヨウタンポポは受粉することなく種子をつける(単為生殖)ことができるので繁殖力が強く、路傍やちょっとした空き地にでも生育しているのでよく目につくせいでもあるようです。
      多摩丘陵では、里山の奥の草地や林縁にはほとんど見られません。ただ、市街地周辺の路傍や草地などでは、ほとんどがセイヨウタンポポです。
      
      日本にはタンポポの仲間は20種あまり自生していますが、多摩丘陵では、このセイヨウタンポポとカントウタンポポに、花が白いシロバナタンポポの自生を確認していますが、他のタンポポの仲間は未確認です。 
      
      ■名前の由来
      「タンポポ」の名前の由来ははっきりとはしていないようです。一説には、室町時代に中国名「白鼓丁」から「ツヅミグサ」となり、能楽の「鼓(つづみ)」の音を擬音化した「タン」や「ポン」から「タンポポ」に転訛したというものがあります。
      明治時代に欧州から渡来した外来種なので、「セイヨウタンポポ」です。
      漢字名の「蒲公英」は漢名からで、生薬名でもあります。
      
      タンポポの仲間の花茎を草笛にして遊びます。
      また、花茎を10cmほどに切り、両端に2mmほどいくつかの切れこみを入れると丸く反り返ります。これを松葉等に通して小川などにつけて水車にして遊びます。
      
      ■文化的背景・利用
      1877年(明治10年)に札幌農学校(現在の北海道大学の前身)に教師として赴任してきたブルックスが蔬菜(野菜)として持ち込んで栽培したものが逸出して日本各地に帰化したというのが、定説になっています。
      渡来して歴史が浅いこともあって、知られた詩歌や文芸にはその名は現れていないようです。
      
      ■食・毒・薬
      タンポポの仲間の葉は、野菜として食用にできます。
      また、タンポポの花のテンプラは美味しいものです。
      さらに、タンポポの根を乾燥させて2cmほどに切り、炒ってから細かく刻むかすり潰してお湯を注ぎ「タンポポコーヒー」にします。タンポポコーヒーには母乳の出をよくする効果があります。
        
      タンポポの仲間の根を含めて全草を乾燥させたものが生薬「蒲公英」で、解毒、利尿、急性乳腺炎、できもの、感冒による発熱など炎症性の疾患、健胃、強壮剤、利尿剤などにと幅広く用います。
      
      ■似たものとの区別・見分け方
      タンポポの仲間は、カントウタンポポ、カンサイタンポポ、ヒロハタンポポ(別名:トウカイタンポポ)、エゾタンポポ、シロバナタンポポやセイヨウタンポポなどがありますが、花色が白色のシロバナタンポポ以外は、花の基部を形成する緑色の多数の葉状の裂片(総苞)の形態で区別します。ただ、慣れないと難しいものがあります。
      
      ○カントウタンポポでは、総苞片が密着していて反り返らないことで、総苞片が反り返るのが特徴のセイヨウタンポポと容易に区別できます。また、カントウタンポポの総苞片の先には小さな角状の突起があるのも特徴です。
      ○シロバナタンポポでは花が白いので容易に区別できます。
      ○関東地方にも分布するエゾタンポポでは、総苞片が卵型で他よりも幅広なのが特徴で、総苞片の先には角状の突起はありません。多摩丘陵では、エゾタンポポは未確認です。
      ○同じく関東地方から和歌山県の沿岸に近い場所に自生するヒロハタンポポ(別名:トウカイタンポポ)では、カントウタンポポに似ていますが、総苞片の先の角状の突起が明らかに大きいことで見分けます。総苞には、内側の内片と外側の外片がありますが、ヒロハタンポポ(別名:トウカイタンポポ)では総苞外片も総苞内片も花に沿って明らかに立っているのも特徴です。なお、「ヒロハ」の名はありますが、葉の幅が広いわけではありません。多摩丘陵では未確認です。
      ○カンサイタンポポは、長野県以西に分布します。総苞片の幅が狭いのが特徴です。また、花の大きさも、他のタンポポの仲間よりも一回り小さく径3cmほどと小型です。
    |  
     
    | 
   
    
     写真は「花」、「花と総苞片」、「根生葉」 と「参考:カントウタンポポ総苞片」の4枚を掲載 |  
       |  
     | セイヨウタンポポの花 |  
      
       |  
     | セイヨウタンポポの花と総苞片 |  
       |  
     | セイヨウタンポポの根生葉 |  
       |  
     | 参考:カントウタンポポの総苞片 |  
     
   |