■特徴・分布・生育環境
      常緑のツル性の木本です。全体に毒性があります。
      茎から気根を出して樹幹や岩壁をよじ登ります。
      
      ただ、観察した経験からは、この植物には二つの顔があります。
      樹冠がふさがっていて陽光が届かない間は地表を這うように茎を伸ばし、葉の色は暗く大きさも小さくてまるで別の植物のようです。また、花もつけません。
      しかし、風倒木や伐採などによって樹冠にギャップ(空隙)ができて陽光が差し込むと、陽光を目指して茎を這い登らせて樹冠を目指します。葉も大きくなり色もやや明るい緑色になり、花をつけます。
      
      晩春〜夏にかけて、結構長い間花をつけます。ツルの先の葉腋や枝先に房状(集散花序)に多くの花をつけます。
      花径は2〜3cmほどの高杯型で、筒型の花筒の先で5裂しています。裂片は片方によじれていて全体としてスクリュー型になります。
      花色は白で、花被片の基部が黄色を帯びます。花筒は細長く、下部が細く上部が少し太くなっています。
      花にはよい香りがあります。
      
      葉は2態あります。地表を這っている間の葉は暗緑色で小さくてやや厚く、長さ1〜2cm、幅5mm〜1cmほどの葉先が三角形状の楕円形で、波状の浅い鋸歯(葉の縁のギザギザ)があり葉脈に沿って白斑が入ります。
      陽光が届く部位の葉は大きくなりやや明るい緑色で、葉先が三角形状の楕円形でやや厚く表面にやや光沢があり、長さ3〜7cm、幅1.5〜2.5cmほどです。葉縁は全縁(葉の縁にギザギザがない)で、白斑は入りません。
      
      果実は袋状ですが、長さ20cm前後のひも状で熟すと裂開して、先端に多数の冠毛がある長さ1cmほどの線形の種子を出し、風で運ばれます。
      
      この仲間は、花つきもよく丈夫なので、道路のフェンスなどの緑化樹に利用されます。しばしば庭の垣根にも利用されています。
      なお、とても良く似た中国大陸原産の「トウテイカカズラ(別名トウキョウチクトウ)」や近畿以西〜中国大陸に自生する「ケテイカカズラ」、葉に斑入りの園芸品種などもよく植栽されています。
      
      多摩丘陵では、常緑樹林の林床によく見かけますが、開花した個体はめったにありません。
      また、人家周辺の垣根や道路フェンスの緑化樹としてしばしば植栽されています。
      ただし、種としてのテイカカズラとは限らず、上述の種であることも多いので注意が必要です。
         
      ■名前の由来
      12世紀後半〜13世紀前半(平安時代)の有名な歌人「藤原定家」にちなんだ命名であるというのが一般的になっています。
      すなわち、歌人でもあった式子内親王(後白河天皇の第3皇女)を愛した藤原定家が彼女の死後にも執着してその墓に葛(かずら)となってからみついたという伝承からの命名であるというのが一般的ですが、他説もあります。
      
      なお、京都市上京区の般舟院陵にある石仏群と石塔は式子内親王の塚であるとされ、また定家蔓の墓と呼ばれてきているとされています。
      また、「絡石(らくせき)」は漢名で、古い時代からこの名が現れています。
      
      ■文化的背景・利用
      「テイカカズラ」は、古い時代から身近な存在であったようです。
      古事記に現れる「まさきかづら」はテイカカズラであるとする説があります。
      
      また、日本最古の本草書である「本草和名」に現れる「絡石(らくせき)」に「和名 都多(つた)」として現れているのは「つた」ではなく「テイカカズラ」であるとされます。
      万葉集にも「つた」や「いわつた」などとして現れているとされています。
      その後の「古今集」、「新古今集」や西行法師による「山家集」でも詠われているとされています。
      
      また、上述のように、式子内親王にまつわる藤原定家の伝承が命名のもとになっているとされることが多い。
      江戸時代の本草綱目啓蒙の「絡石」に「テイカゝヅラ」などとして現れています。
      
      ■食・毒・薬
      葉や枝など全体に毒性があり、誤って食べると嘔吐や麻痺(まひ)を惹き起こす恐れがあります。また、樹液に触れるとカブレます。
      漢方では解熱や強壮などの薬用にも用いられますが、毒性もあるので一般での使用は絶対に避けてください。
      
      ■似たものとの区別・見分け方
      この仲間は相互にとてもよく似ていて、その上に園芸品種もあるので見分けが難しい種類です。
      
      このテイカカズラ(Trachelospermum asiaticum)では、花被片がやや幅広に見え花被片の基部が黄色味を帯びています。ただ、個体変異もあるのでこれだけで判断すると間違うこともあります。花の基部の花筒の下側の細い部分の方が上部のやや太い部分よりも長ければ、まずテイカカズラです。
      外来種のトウテイカカズラ(唐定家葛:Trachelospermum jasminoides)では、花被片がやや細身に見え花被片の基部まで白く、全体に白っぽく見えます。ただ、個体変異もあるのでこれだけで判断すると間違うこともあります。花の基部の花筒の下側の細い部分と上部のやや太い部分の長さが同じくらいならば、まずトウテイカカズラです。
      ケテイカカズラ(毛定家葛:Trachelospermum jasminoides var. pubescens)は、トウテイカカズラの変種で、花柄や葉の裏に毛があります。トウテイカカズラと同様に花の基部の花筒の下側の細い部分と上部のやや太い部分の長さが同じくらいです。
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     写真は「花」、「花筒」、「花と葉」、 「花をつける茎の葉」と 「地表を這う葉」の5枚を掲載 |  
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     | テイカカズラの花 |  
      
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     | テイカカズラの花筒 |  
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     | テイカカズラの花と葉 |  
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     | 花をつける茎の葉 |  
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     | 地表を這う葉 |  
     
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