■特徴・分布・生育環境
      落葉の低木でほとんどの場合株立ちし、高さ2m〜3mくらいになります。日当たりの良い林縁に多い。
      樹皮は灰褐色で短冊状にはがれます。
      
      花は、初夏(5月中旬ごろ〜)に円錐状の花序を出して、径2cmほどの白色の5弁花を横向〜下向きに多数つけます。
      
      葉は対生(対になってつく)で、変異があり、長さ4〜9cm、幅3〜4cmほどの狭楕円形〜卵状披針型で、葉先は鋭三角形状です。
      葉の表裏に毛が多く、触るとザラつきます。
      果実は、径4〜6mmのお椀のような独特の形をしています。
      
      日本各地から中国に分布します。
      多摩丘陵では、時々林縁に見かけます。また、畑の境や人家の周辺に植栽されています。
      
      ■名前の由来
      「ウツギ(空木)」の名は、茎の中心が中空であることからの名です。ただし、若い茎では髄が詰まっています。
      別名の「卯の花」は、旧暦の「卯月:現在の暦では5月初旬の立夏から6月頃」に咲くという意味です。
      ウツギと名が付く植物は6科11属にわたって使われていて、通常は茎が中空であることを意味していますが、多くの場合髄が詰まっています。
      
      ■文化的背景・利用
      「♪卯の花のにおう垣根に ほととぎすはやも来鳴きて しのび音(ね)もらす夏は来ぬ」の歌はよく知られています。
      万葉集には、「卯の花」として「ウツギ」が24首にも現れています。夏の到来を告げる花として親しまれていたようで、しばしば夏鳥のホトトギスとともに詠われています。
      平安時代の「倭名類聚抄」や「本草和名」に「和名 宇都岐(うつぎ)」として現れています。
      源氏物語や枕草子にもその名が現れています。
      また、ウツギ(卯の花)は古今和歌集などにも多く詠われています。新古今和歌集に柿本人麻呂の歌として「なく声を えやは忍ばぬ ほととぎす 初卯の花の かげにかくれて」があります。
      江戸時代に貝原益軒によって編纂された「大和本草」にその名が現れています。
      江戸時代の芭蕉の句集にも何句かで「卯の花」が詠われています。
      
      昔は、「卯の花(ウツギ)」には、邪鬼や悪霊を追い払う力があるとされ、境界樹などとしてしばしば植栽されていました。
      
      材は、堅く緻密なために木クギとして利用されます。
      
      ■食・毒・薬
      「ウツギ(卯の花)」の葉や果実を乾燥させ煎じたものに、むくみや利尿などの効能があるとされています。
      食用にはしません。
      
      ■似たものとの区別・見分け方
      この仲間(ウツギ属)のウツギ、マルバウツギ、ヒメウツギとウラジロウツギは、互いによく似ています。
      
      ○ウツギでは、円錐塔状の花穂の花は下向〜横向きにつきます。また、葉先が鋭三角形状にやや伸びています。花穂の基部の一対の葉には(短いけれど)明瞭な葉柄があります。
      ヒメウツギは、樹高が50〜70cmほどとかなり低いことでウツギやマルバウツギと区別できます。また、花期がウツギやマルバウツギよりも3週間〜1ヶ月ほど早い。さらにまた、ウツギやマルバウツギよりも葉が細長く見えます。
      マルバウツギでは、円錐塔状の花序の花は(ウツギやヒメウツギとは異なり)上向〜やや横向きにつき一回り小さい。また、花穂の基部の一対の葉はともに茎に密着しているのが大きな特徴です。
      
      ○マルバウツギは、ウツギやヒメウツギによく似ていますが、円錐花序の花が普通は上向きにつきます。また、花序のすぐ下の1対の葉が茎に密着していることが、ウツギやヒメウツギとの良い区別点です。なお、「マルバ」の名はありますが、葉が円形なわけではなく、ウツギやヒメウツギの葉よりも葉がやや幅広で葉縁が丸みを帯びて見える程度です。
      
      ○ヒメウツギは、花期がウツギよりも3週間〜1ヶ月ほど早い(4月中旬〜)のが特徴です。また、ヒメウツギは、樹高がかなり低く50〜70cmほどで、普通は茎が枝垂れています。葉裏が無毛なのが特徴で、よく似たウツギでは有毛で触るとザラつくのですが、慣れないと区別は結構難しい。
      
      なお、この仲間(ウツギ属)では、花糸(雄蕊(オシベ)の軸部分)に翼(横に張り出す膜状の部位)があります。この翼の先端の形状で、ウツギ、マルバウツギとヒメウツギを見分けることができますが、微小な部位なので見慣れていないと結構難しい。
      ウツギでは、花糸の翼の尖端はツノ状になっていますが、このツノはほぼ水平なのが普通です。
      マルバウツギでは、花糸の翼の先端は角状にはならず、序々に幅が狭まっていきます。
      ヒメウツギでは、花糸の翼の尖端はツノ状になっていますが、このツノが斜め上向きになっているのが普通です。
      
      ○ウラジロウツギは、長野県南西部〜静岡県北西部から以西に分布しています。葉裏に毛(星状毛)が密生していて灰白色なので見分けられます。ごく稀に庭木として植栽されています。
      
      多摩丘陵には、名が似たコゴメウツギが多く自生していますが、コゴメウツギでは花径が5mmほどととても小さく、葉にモミジの葉のような裂れ込みがあるので容易に区別できます。いずれにしてもコゴメウツギはバラ科で全く別種です。
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     写真は「花」、「花と葉」、「果実」 「花穂の基部の葉」の4枚を掲載 |  
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     | ウツギの花 |  
      
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     | ウツギの花と葉 |  
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     | ウツギの果実 |  
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     花穂の基部の葉 明瞭な葉柄がある |  
     
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