■特徴・分布・生育環境
      この仲間(ヨモギ属)には30種余りもありますが、関東地方の山野にもっとも普通なのはこのヨモギ、あるいはオオヨモギです。
      
      日当たりのよい草地などに生育する多年草です。
    草丈50cmほど、花時には1mほどになります。茎は叢生しよく分枝します。
      
      秋に、茎頂に長い花穂(円錐花序)を出して多くの小さな花をつけます。
      花は先のすぼまった鐘型で長さ2.5〜3.5mm、種子は径1.5mmほどで目立ちません。
      
      茎葉は長さ6〜12cmほどで羽状に深裂していて、全体としては楕円形です。
      
      本州以西から朝鮮半島に分布します。
      多摩丘陵では、草地や林縁あるいは畑地脇などによく見かけます。
         
      ■名前の由来
      乾燥した葉はよく燃えるので「善燃草(よもぎ)」となったという説や、根茎を四方に伸ばすところから「四方草(よもぎ)」となったという説がありますが、定説はないようです。
      
      ■文化的背景・利用
      万葉集や後拾遺集、新古今集に「モグサ」や「サシモグサ」などとして何首かでヨモギが詠われています。
      
      百人一首に採録されている「後拾遺集」の歌
      「かくとだに えやは伊吹の さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを」
      の「さしも草」はこのモグサです。
      
      平安時代の「倭名類聚抄」の「蓬」に「和名 与毛木(よもぎ)」として現れています。
      江戸時代の「本草綱目啓蒙」に「サシモグサ、ヨモギ、モチグサ」などの名が現れています。
      
      ヨモギには少量の硝酸が含まれているので、織田信長が約400年前「黒色火薬」の原料としたとされています。
      なお、「黒色火薬」は硝石(硝酸カリウムの結晶)、硫黄(いおう)と黒炭を混合したもので、ヨモギを繰り返し醗酵させ純度の高い硝石を採取したとされています。
       
      ■食・毒・薬
      夏に採取した葉を乾燥させたものが生薬「艾葉(がいよう)」で、煎じたものに食欲増進、止血、冷えによる腹痛、胸焼け、下痢や便秘などに効能があるとされます。
      
      お灸に使う「もぐさ」は、ヨモギあるいはオオヨモギの若葉をよく天日乾燥させたものをよくもんで腺毛(せんもう)を集めたものです。
      お灸は血のめぐりがよくなり、保温にもよいとされています。
      艾葉や生の葉を木綿袋に入れて煮出したものを風呂に入れてヨモギ風呂にします。腰痛に効能があるとされます。
      切り傷、虫さされやかゆみ止めに生の葉を絞って塗布すると効果があるとされます。
      
      生の若葉を茹でて水に晒しアク抜きをして、てんぷら、ゴマあえ、油いためや汁の実など食用にします。 
      また、「モチグサ」と呼ばれ、昔から草もち・ヨモギ餅などに利用されますが、もとは薬用の意味があったようです。
      草もちは、蒸したモチ米とヨモギと混ぜて切餅にするもので、雛祭の菱餅はこの草もちです。
      また、上新粉をこねて蒸し、茹でたヨモギを混ぜて臼でひいて作る場合もあります。
      
      ■似たものとの区別・見分け方
      オオヨモギは全体にやや大型ですが、見た目だけでの区別は困難です。
      ヨモギでは葉の基部に2〜3枚の小さな葉(托葉)がありますが、オオヨモギにはないことで区別します。
      ただ、一般にはヨモギもオオヨモギも区別しないことが多いようです。
      
      ヒメヨモギも分布する可能性がありますが、茎葉が細かく中〜深裂していることで区別できます。茎が紫色を帯びることが多いのも特徴です。ヒメヨモギは多摩丘陵では未確認です。
      
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     | 写真は「花穂」と「早春の若葉」の2枚を掲載 |  
      
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     | ヨモギの花穂 |  
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     | ヨモギの早春の若葉 |  
     
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