■特徴・分布・生育環境
      湿生地に自生する大型の多年草です。
      絶滅を危惧される種とされていたのですが、2015年現在では回復しているという報告もあって確認できていません。
      
      多摩丘陵では、2017年現在では限られた谷戸で保全されている極少ない個体を確認できているだけです。
      
      「ニガナ」の名はありますが、多摩丘陵で比較的よく見かけるニガナの仲間(同属)ではなく、近縁ですが別属です。
         
      大型です。秋の花時には草丈80cm〜1mほど(時に1.2〜1.5m)になります。
      茎はほぼ垂直に立ち、枝を分けることはありません。
      
      秋に、茎頂に狭円錐搭状の花序をつけ、20個ほどの多くの花をつけます。
      花は、径4cmほどと大きい。
      花色は黄色です。時に淡黄色です。
      花被片(舌状花)は、20個を越えます。
      
      個々の花はやや下垂することも結構ありますが、横向き〜やや上向きなど様々です。
      初期に蕾の時期には上向きです。
      開花し始めると個々の花はやや下向きになることが多い。また、花穂の上部の開きかけの蕾も下向きになることが多い。
      
      花穂(花序)の基部から開花して上部に咲き上がります。
      
      葉は変異が大きく、三角形状〜楕円形状〜羽状に深く裂れ込むもの〜葉縁が浅く波状になるものなど様々です。
      根生葉は、多くの場合は長さ10〜15cmほどで葉先は三角形状です。
      茎の中ほど〜下部の葉では長さ6〜10cmほどです。
    
    本州以北に分布します。
      多摩丘陵では、2017年現在ではごく限られた場所に極少ない個体数を確認できているだけです。
      これは、多摩丘陵では1970年頃には溜め池や小河川などの護岸が進み、自生に適した湿生地が大きく減少したことに因るものと考えられます。
      
      ■名前の由来
      「ニガナ(苦菜)」に似ていて、はるかに大型なので「大苦菜」とされたというのが一般的です。
      
      しかし、種としてのニガナは花被片(舌状花)の数が5枚〜7枚と少ないのに対して、オオニガナでは花被片(舌状花)の数が20枚を越えているので、個々の花としては似ているとは言えません。
      ただ、ニガナの仲間(ニガナ属)のジシバリ(標準和名:イワニガナ)やオオジシバリでは花被片(舌状花)の数が20枚を越えていて個々の花は似ています。
      
      なお、「ニガナ」の名は葉や茎を切るとにじみ出る白っぽい乳液を舐めると苦みがあり、食用にできるので「苦菜(にがな)」です。ただ、生の葉を噛んでもほとんど苦みは感じません。
      
      ■文化的背景・利用
      「オオニガナ」としては、万葉集や多くの和歌集には詠われていません。文学的にも記載はないようです。
      また、多くの本草書にも「オオニガナ」としては現れていません。
      
      なお、「ニガナ」自体としては、江戸時代の「本草綱目啓蒙」や貝原益軒による「大和本草」などにその名が現れています。
      また、平安時代初期に編纂され、現存する最古の薬物辞典(本草書)とされる「本草和名」にも「ニガナ」の名が現れているようで、古い時代から身近な存在だったようです。
      
      ■食・毒・薬
      「オオニガナ」を食用や薬用にするという報告はないようです。また、有毒であるという報告もないようです。
      
      なお、ニガナの若い葉は、茹でて水に晒し和え物などにするとほろ苦く、食用にすることができます。沖縄では、滋養食とされるようです。
      民間で、全草を乾燥させて煎じたものを健胃や鼻づまりなどに利用するようです。
      
      ■似たのものとの区別・見分け方
      「ニガナ」や「イワニガナ(別名:ジシバリ)」の仲間(ニガナ属)や近縁の「アキノノゲシ属」と「フクオウソウ属」には「ニガナ」の名を持つものが10種以上もあります。
      それらは頭花が相互に似ていて見分け難いところがあります。
      
      花色(花被片の色)は、ほとんど黄色〜淡黄色です。
      ただし、次の3種は紫色〜帯紫白色です。
      
      〇ムラサキニガナ(と北海道以北の北地に自生するエゾムラサキニガナ)は、花色が紫色なので容易に区別できます。植物分類としてはアキノノゲシ属です。
      
      〇タカサゴソウも花弁(舌状花)が紫色を帯びた白色です。花弁(舌状花)の数は多く、25枚前後あります。植物分類としてはニガナ属です。
      
      以下では、花弁(舌状花)の色は黄色〜淡黄色〜黄白色(時に白色)です。
      
      ○ニガナでは、花は径1.5cmほどで花弁(舌状花)は細長く、他とは異なり5枚〜7枚なのが特徴です。
      根生葉は変異が多く、細長い楕円形から披針型で様々に裂れ込みが入ります。長さも様々で3〜10cmほどです。
      草丈は20〜30cm(時に50cmほど)で、主たる茎は立てません。
      
      〇シロバナニガナは、ニガナの変種です。頭花は通常白色で、花弁(舌状花)の数もニガナよりも多く8〜11枚あります。
      ニガナよりも大型で草丈40〜70cmになり茎もやや太く葉も大きいので区別できます。
      なお、このシロバナニガナの花色が黄色のもの(品種)をハナニガナと呼びます。
      
      〇クモナニガナとタカネニガナはニガナの変種です。高山帯に自生します。
      頭花は通常黄色で、花弁(舌状花)の数がニガナよりも多く9〜11枚あります。
      
      ○ジシバリ(標準和名:イワニガナ)では、花径2cmほどとニガナよりもやや大きく花弁(舌状花)の数が十数枚から20枚近くと多い。葉身が長い葉柄の先につき卵型から偏円形なのが特徴です。
      
      ○オオジシバリでは、花径2.5cmほどとニガナやジシバリよりもやや大きく花弁(舌状花)の数が十数枚から20枚近くと多い。ジシバリとは異なり葉身がサジ型なのが特徴です。
      
      〇ノニガナは、葉が細長く、葉先が鋭三角形状に長く伸びています。葉の基部が狭三角形状に突き出すように茎を抱くことで区別できます。
      
      〇ハマニガナは海岸などに自生します。葉が深く3裂〜5裂していて裂片が円形状なので、見た目には3〜5小葉に見えるのが特徴です。
      
      〇カワラニガナは、河川敷などの礫地に自生します。葉がとても細長く線形なことで区別できます。
      花弁(舌状花)は20〜30m枚ほどある。
      
      〇ホソバニガナは、もともと個体数が少なく稀な草本です。カワラニガナと同様に葉が線形で茎葉も披針型なのが特徴です。
      しかし、花弁(舌状花)はニガナ同様に5枚(〜7枚)で、カワラニガナとは区別できます。
      
      植物分類としてはニガナ属に近縁のアキノノゲシ属にも「ニガナ」の名を持つものがあります。
      ただ、上述の通りムラサキニガナとエゾムラサキニガナは、他とは異なり花色が黄色ではなく紫色です。
      
      このアキノノゲシ属の仲間は、大型で主たる茎を立てて高さ1m前後になります。
      
      〇ヤマニガナは、草丈1mほど(時に2m近く)で、初秋〜秋に円錐塔状の花序に黄色の花を多くつけます。
      花はやや小さく径1cmほどです。花弁(舌状花)の数は8〜10枚あります。
      
      〇アキノノゲシは、ニガナの名はありませんが、頭花の様子がジシバリなどと似ています。ただし、花色は明らかに淡い黄色の黄白色です。
      草丈1mほど(時に2m近く)です。初秋〜秋に円錐塔状の花序に花を多くつけます。
      花はやや大きく径2cmほどです。花弁(舌状花)の数は20枚を越えます。
      
      フクオウソウ属にも「ニガナ」の名を持つものがあります。上記のヤマニガナやアキノノゲシ同様に大型です。
      
      〇オオニガナは、茎を立てて1m前後になります。枝を分けません。
      秋に円錐塔状の花序を立てます。花は黄色(〜淡黄色)で径4cmほどと大きい。
      個々の花は下垂して開くことが多いのですが、横向き〜やや上向きのものも多い。
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     写真は「全体」、 「花穂:個々の花のつき方は様々」、 「花」、「若い蕾:上向き」、 「葉:烈れ込みが無いもの」、「葉:浅く裂れ込む」 「葉:深く裂れ込む」の7枚を掲載 |  
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     オオニガナの全体 下部にいくつかの茎葉 |  
      
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     花穂:下垂する花や 横〜上向きの花など様々 上部の蕾も下垂 |  
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     若い蕾の花穂 若い蕾は上向き |  
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     | オオニガナの花 |  
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     葉は変異が大きい 裂れ込みが無いもの |  
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     葉は変異が大きい 浅く裂れ込むもの |  
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     葉は変異が大きい 深く裂れ込むもの |  
     
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