■特徴・分布・生育環境
      多摩丘陵では、絶滅が危惧される種となっています。2016年現在では、極めて限られた場所でごく少ない個体数が保全されているだけです。
      
      花被片を片側に偏ってつける花の形態からは想像できませんが、キキョウ科です。ただ、別の科に分ける説もあるようです。
      全草が有毒です。
      
      水湿性地に自生する多年草です。
      花時には、草丈50cm〜1mほどです。
      茎は枝分かれせずに直立します。茎の周りに小型(長さ5cm前後)の葉がラセン状に密につくことと、葉に柄がないので茎を抱いているように見えることが特徴です。花はまだですが夏には草丈30〜50cmほどになり、茎の下部から上部まで小型の葉が密につく草姿が特徴的なので比較的見分けやすい。
      
      花は、初秋(多摩丘陵では8月下旬〜9月中旬)で、茎の最上部の葉腋に順に茎頂まで多くつきます。全体として穂状(総状花序)になり十数個の花をつけます。
      花被片は5枚で、片側に偏ってつけるのが特徴のひとつです。花被片は5裂したものです。両外側の花被片は深裂していて基部から横方向に開き後方に反り返り(巻き上がり)ます。中央の3枚の裂片は前方に向いて並び(中裂)ます。
      花色は青紫色です。花は、長さと幅ともに3cmほどです。
      
      葉は、長さ5cm前後の披針形で葉先は鋭三角形状です。葉縁に細かい鋸歯(葉の縁のギザギザ)があります。上部の葉は苞葉状に小さくなっていきます。
      
      果実は、偏球形で径1cm前後です。5裂したガク片に半ば包まれていて、中心に花柱が残ります。
      
      日本各地〜北東アジアに分布します。
      多摩丘陵では、上述の通り2016年現在ではごく限られた場所に少ない個体数が保全されているだけです。1960年代までは谷戸奥の溜め池や水湿性地に自生があったと推定されます。その後、コンクリートなどによる護岸工事が進んだことで水湿生地が減少したことが個体数の激減につながったと考えられます。
         
      ■名前の由来
      「サワ(沢)」の名は水湿性地に自生することからです。「桔梗(キキョウ)」の名は、「キキョウ」に近縁(キキョウ科)であることからと考えられます。
      江戸時代には「サワギキョウ」の名が既に使用されていたのですが、花の形態が大きく異なるのにもかかわらず「キキョウ」の名が与えられていたのには少し驚きます。
      
      ■文化的背景・利用
      知られた詩歌や文芸などにはその名は現れていないようです。
      江戸時代の本草書である「大和本草」や「本草綱目啓蒙」などにはその名が現れています。
      
      園芸店などで「ロベリア」などとして販売されているのはこの仲間(同属:Lobelia(ロベリア)属)の1種または園芸品種です。花色が鮮紅色のアメリカ(ベニバナ)サワギキョウが知られています。
      
      ■食・毒・薬
      全体にアルカロイド系の有毒成分を含み、強毒性があります。
      薬用に利用されます。
      もちろん食用にはできません。
      
      ■似たものとの区別・見分け方
      〇多摩丘陵では、この仲間(ミゾカクシ属)ではこの仲間を代表するミゾカクシとこのサワギキョウを確認できています。ただし、ともに自生は稀です。
      
      〇ミゾカクシとサワギキョウでは、花被片が片側に偏るという花の形態が似ています。しかし、花色が前者は淡紅色,後者が青紫色と異なります。何よりも前者は草丈5〜10cmほどとかなり小さく、後者では草丈50〜100cmほどと大型であることで容易に見分けられます。
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     写真は「花全体」、「花穂」、 「花:細く見える両側裂片が巻き上がる」、 「茎葉:茎の周囲に密につく」と 「果実:偏球形でガク片に半ば包まれる」の5枚を掲載 |  
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     | サワギキョウの花全体 |  
      
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     | サワギキョウの花穂 |  
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     サワギキョウの花 細く見える両側裂片が巻き上がる |  
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     サワギキョウの茎葉 茎の周囲に密につく |  
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     サワギキョウの果実 偏球形でガク片に半ば包まれる |  
     
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