■特徴・分布・生育環境
      環境省による準絶滅危惧種です。
      生育に適した日当たりのよい草地が減ったことが大きな要因のようです。
      
      葉も茎も細く、イネ科などの線型の葉が多い草地に生育するので見分け難い草本です。
      細い茎の先につける花も日中は閉じていて径5mmほどなので目立たず、東京都の中島氏に教えていただくまでは、これがスズサイコであるとは判りませんでした。
      
      日当たりのよいやや乾いた草地や土手などに自生する多年草です。
      草丈は、花時に40cm〜70cm、時に1mほどになりますが、茎や葉がとても細く、注意していないと気がつきません。
      また、日中には花は閉じていて、淡褐色の蕾も径5mmほどと小さいので目立ちません。
      夏に(時に初秋まで:多摩丘陵では6月下旬から)、細い花茎をほぼ直立させて、長さ2cmほどの細い花茎(総花柄)を分岐させ、さらに花茎を分けてまばら(数個から7〜8個)な房状(集散状)に花をつけます。
      ただし、この花は陽光が当たると閉じる性質があるために、早朝でないとみられません。しかし、陽光が遮られる夕方や雨天時にも開くようです。
      
    花は小さく、径1cmほどで、5裂する花冠の喉には5個の副花冠があります。
      花被片は黄褐色で副花冠は外にせり出していて黄緑色です。
      花被片は、開くと序々に外に巻くので、やや幅広に見えることも細めに見えることもあります。
      
      葉はほぼ対生(対になってつく)し、長さ6〜15cmほどの細長い線形(披針形)です。
      
      花後に、長さ5〜8cmの狭紡錘形(両端が狭円錐状)の袋果をひとつぶらさげます。
      仲間のコバノカモメヅルでは、袋果は狭円錐状(とても細いとんがり帽子のよう形)です。
      ただ、多摩丘陵では、里山であるために草刈が入るので果実を見るのはごく稀です。
      
      分布は、日本各地から朝鮮半島・中国大陸です。
      多摩丘陵でも個体数が大変少なく、めったに出会えず稀少種となっています。なお、多摩丘陵は里山なので、草刈が入ることも影響していることもあります。
      
      ■名前の由来
      「すず鈴)」の名は、日中には閉じている花の蕾の形が鈴に似ていることからというのが一般的です。
      「サイコ(柴胡)」の名は、草姿全体の印象が薬草として知られた「ミシマサイコ(三島柴胡)」に似ているからというのが一般的です。
      ただ、ミシマサイコでは花色は黄色で花の形もかなり違うので他説もあります。
      
      ■文化的背景・利用
      平安時代の「本草和名」や「倭名類聚抄」にその名が現れているようです。
      江戸時代の「本草綱目啓蒙」にもその名が現れているとされています。
      知られた詩歌や文芸などに、その名は現れていないようです。
      
      ■食・毒・薬
      中国で薬用にするという説があるようですが、定かではありません。
      このような場合、毒性があることがあり、食用にするのは避けるべきです。
      
      ■似たものとの区別・見分け方
      多摩丘陵には、仲間(同属)のコバノカモメヅルが稀に自生しますが、コバノカモメヅルでは、花色が濃紫色で葉も(やや幅広の)広披針形です。
      
      花がやや似たものとして近縁(オオカモメヅル属)のオオカモメヅルがごく稀に見られますが、花が一回り小さく、花被片の幅がやや広いことで区別できます。また、オオカモメヅルの花は淡紫色です。さらに、オオカモメヅルの袋果は2個が対になってつきます。
      
      名前が紛らわしいのですが、コカモメヅルも近縁(オオカモメヅル属)のツル性草本で、花が径5mmほどとオオカモメヅルに似ていますが、花柄が長く花序が大きく見えることで区別できます。
      
      この科を代表するガガイモも、多摩丘陵に稀に自生しますが、ガガイモの花は花被片が肉厚で密に毛があることで容易に区別できます。
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     写真は「開花した花(早朝や夕方)」、 「蕾(閉じた花:陽光が射している時)」、 「閉じかけている花」、 「全体(日中)」と「葉」の5枚を掲載 |  
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     開花した花 (早朝や夕方) |  
      
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     蕾(閉じた花) (陽光が射している時) |  
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     | 閉じかけている花 |  
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     | スズサイコの全体(日中) |  
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     | スズサイコの葉 |  
     
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