■特徴・分布・生育環境
      後述のように「萩」は「秋の七草」のひとつです。
      
    ミヤギノハギは、大人の背丈ほどになる落葉低木で、草本のような性質も備えているので半低木ともされます。
      
      花は、夏の盛りからから秋にかけて葉腋に多くつけ、長さ1.5cmほどになる紅紫色の蝶型花です。
      枝が枝垂れているのが特徴です。
      
      葉はマメ科に普通の三出複葉(小葉3枚からなる葉)で、小葉は円形に近い楕円形で、長さ3cm前後です。
      
      本種は中部地方以北の日本海側に分布するケハギが江戸時代に園芸化されたものであるという説があります。
      ただ、逆に、ケハギはミヤギノハギが野生化したものであるという説が一部にあります。
      
      日本各地に分布していますが、植栽されたものか、それらが逸出したものであるとされています。
      多摩丘陵では、人家周辺に時に植栽されています。
         
      ■名前の由来
      ハギの名は、草本のように見えるのに古い株から芽を出すので「生え芽(き)」から転訛したという説がありますが、一般的ではありません。
      ミヤギノハギは宮城県の県花ですが、仙台市郊外の宮城野地区には自生はなく、「宮城野」の名の由来はよくわかっていないようです。
      なお、「萩」は国字のようで、中国語の「萩」は全く別種です。
      
      ■文化的背景・利用
      「秋の七草」は、万葉集の山上憶良の歌
      「秋の野に 咲きたる花を 指(おゆび)折り かき数ふれば 七種の花」
      「萩が花 尾花(すすき) 葛花(くず) なでしこの花 おみなえし また藤袴(ふじばかま) 朝貌(あさがお:ききょう)の花」
      がその起源となっています。
      
      この「萩」は、後述する仲間(同属)のマルバハギやヤマハギであるとされています。
      ミヤギノハギの名は、上述のように万葉の時代よりかなり後に現れていてこの「秋の七草」には含まれていなかったとされています。
      
      単に「ハギ」という名の植物はありません。
      
      「萩」は、古い時代から多くの詩歌や文芸に数多く現れていて、古くから日本人に親しまれていたようです。
      万葉集には何と141首にも及ぶ歌に「はぎ」が詠まれています。万葉集ではもっとも多く詠われた植物です。
      
      古今和歌集、新古今和歌集や後拾遺和歌集などにも何首か詠われています。
      西行法師による「山家集」にも多くの歌で詠われています。
      紫式部の「源氏物語」や清少納言による「枕草子」にも萩が現れています。
      「平家物語」、「徒然草」や「太平記」などにも「萩」が現れています。
      江戸時代には「しら露もこぼさぬ萩のうねりかな」松尾芭蕉の句があります。小林一茶や与謝野蕪村の句にも詠われています。
      
      平安時代の「倭名類聚抄」にも「萩」の名が現れています。江戸時代の貝原益軒による「大和本草」にも現れています。
      いずれにしても「萩」は総称としての名で、後述するマルバハギやヤマハギ、あるいはこのミヤギノハギなどを区別してはいなかったようです。
      
      ■食・毒・薬
      ハギの仲間には、有毒であるという報告も薬用にするという報告もないようです。ただ、民間でヤマハギやミヤギノハギの根を刻んで天日乾燥したものが婦人病に効能があるとされます。
      食用にはしないようです。
      
      ■似たものとの区別・見分け方
      仲間(同属)のマルバハギでは花柄が短く、花が葉の間に咲いているように見えることで区別できます。同じく仲間(同属)のヤマハギでは枝が枝垂れず、花穂が葉の間から突き出しているので容易に区別できます。
      この仲間(同属)では、多摩丘陵には他にネコハギ、メドハギやヤハズソウが自生していますが、全て草本で草丈も低く、花もかなり小さいので容易に区別できます。
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