■特徴・分布・生育環境
      この仲間(テンナンショウ属)は30種余りにも及び、一部を除き、変異が多く中間的な形質を示すものもあるため、区別が困難な種類です。
      ただ、このウラシマソウは、花から長さ70cmにも及ぶ細長いムチのような付属体を伸ばしているので、容易に区別できます。
      日本固有種です。
      
    草丈70cm〜80cmほどの多年草です。
      春に葉柄の基部に近いところに高さ15cmほどの1個の仏炎苞に包まれた特異な形態の花をつけます。
      
      「仏炎苞」は、有名なミズバショウと同じく、小さな花を周囲に密生させた棍棒状の花穂(肉穂花序)を苞葉が包みこんでいるもので、仏像の後背の仏炎に似ているためこのように呼ばれます。
      仏炎苞の色は外側は淡紫褐色〜紫褐色で、内側の縁が濃紫色で多くの白条(白いスジ)が入ります。
      
      肉穂花序の先端から長さ70cmにも及ぶ暗紫色の細長いムチのような付属体を伸ばし、仏炎苞の外に長くたらすのが大きな特徴です。
      
      葉は、通常1枚で、幅20〜30cmほどの掌状で鳥足状(左右に分かれた葉軸の片側にだけ小葉をつけ鳥の足のようになる)に、11〜17枚の小葉をつけます。小葉の数が比較的多いのが特徴です。
      
      雌雄異株ですが、栄養状態がよいと雌株に性転換するという変わった性質を持っています。
      雄株では、訪花昆虫を外に出して雌株への受粉を円滑にするために、仏炎苞の基部に穴が空いていて訪花昆虫が逃げ出せるようになっています。
      
      偏球形の地下茎はイモ状で特に有毒ですが、全草有毒であるとするのが普通です。
      
      日本各地に分布します。
      多摩丘陵では、この20年ほどの間に個体数を減らしていて2010年現在、限られた場所に少ない個体数しか確認できていません。
         
      ■名前の由来
      長い鞭(むち)のような付属対を花から長く垂らしている様子を、釣りをする浦島太郎にたとえたものであるという説が一般的です。
      
      ■文化的背景・利用
      知られた詩歌や文芸などには、マムシグサあるいはテンナンショウの名は現れていないようです。
      平安時代の「倭名類聚抄」などに漢名「虎掌(こしょう)」として現れているとされます。
      浦島伝説は、日本書紀や万葉集に記載されていて、奈良時代には広く知られていたようです。
      
      ■食・毒・薬
      地下の偏球形の地下茎はイモ状で有毒です。そのまま食べると胃腸障害や麻痺などを惹き起します。
      ただ、古い時代には、イモ状の根茎を茹でるなどし、何度も水に晒し、毒抜きをして、飢饉等の際に食用にしたようです。
      
      マムシグサと同様に、秋に根茎を採取し、輪切りなどにして乾燥させたものを生薬「生南星(しょうなんしょう)」と呼び、去淡などに効能があるとされています。
      
      ■似たものとの区別・見分け方
      草姿が似たマムシグサでは、細長いムチのような付属体はないので容易に区別できます。
      ただ、マムシグサには変異が多く、ムラサキマムシグサ、アオマムシグサ、オオマムシグサ、カントウマムシグサ、コウライテンナンショウやホソバテンナンショウなどに分類する考え方もありますが、中間的な形質を示すものが多くてこれらを区別するのは困難です。
      ミミガタテンナンショウも草姿は似ていますがマムシグサ同様に細長いムチのような付属体はないので容易に区別できます。また、ミミガタテンナンショウでは仏炎苞の開口部の下端が横に大きくせり出していて耳のように見えることが大きな特徴でマムシグサとは比較的容易に区別できます。。
      ムサシアブミでは仏炎苞が袋状に強く巻きこんでいて縁の両側が横に張り出しているという特異な形態をしています。また、マムシグサ、ウラシマソウやミミガタテンナンショウとは大きく異なり、葉が三出複葉です。
      ユキモチソウでは、仏炎苞がほぼ垂直に跳ね上がっていて、仏炎苞の開口部と花序の球状の先端(付属体)が純白なので、容易に区別できます。
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     写真は「花」、「花と葉」、「葉と花(1)」 と「葉と花(2)」の4枚を掲載 |  
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     | ウラシマソウの花 |  
      
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     | ウラシマソウの花と葉 |  
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     | ウラシマソウの葉と花(1) |  
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     | ウラシマソウの葉と花(2) |  
     
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